EXPLORE THE UNSEEN
子供がはじめて遊園地のアトラクションに一人で乗った。
親から離れて一人で15分ぐらい並んで待って、お姉さんの指示を聞いて、乗り物に乗りこんで、一人でベルト締めて。
乗ったのは遊園地によくあるメリーゴーラウンドや空中ブランコのように、小さなドラゴンにのってくるくる回るタイプのやつ。それぞれ別の色のドラゴンが5匹だけついた小さな、小さい子供向けのアトラクション。4才でも一人で乗れるぐらいだから本当に小さくて、親が待っている場所から子供の様子が全部見えた。
並んで待っている間、前の同じ歳ぐらいの子どもに何やら話しかけては、ケンカにならないかと親をヤキモキさせたり(勿論なんともなかった)、かと思えば親が自分を見ている事に気が付いて嬉しそうに笑ったり。順番がきて、係員のお姉さんと何やらお話しして、指示を聞いているときの横顔の真面目そうな面持ちとか。
全部見えるんだけど、遊園地の喧騒もあって全く声が聞こえないから全部が遠い世界の出来事みたいに思えて。
アトラクションが動き始めても一周ぐらいは緊張した顔したまま、まっすぐ前を見て、ハンドル握りしめて。柵の外で待つ親の方など一瞥もしなかった。
2周目で、やっと親を見つけると、まだ少し緊張の残った顔で、小さく手を振ってくれた。
それから、アトラクションが一回転して戻って来るたび、盛大に手を振る親に、律儀に手を振り返してくれた。
あっという間にアトラクションは回転をやめ、係員のお姉さんが
「ベルトを外して下さい」
とアナウンスする。即ベルトを外そうとするけれど、バックルが硬いのか外せなくて少し焦っている。
これは係員のお姉さんがお手伝いに来てくれるのを待たないといけないかな?と親が思っているうちに、自分で外せたようで、焦った心細そうな顔が、一瞬で誇り高い顔になった。
遊園地のドラゴンに一人で乗って、自分でベルトも付け外しできるお兄さんの自信。
自身に満ちた足取りで、ドラゴンから降りると柵の外にいる親の所まで走ってきた。
4才の彼の小さな世界が、既に親の手の届かないところに広がりつつある。 なんだか感傷的になってしまって泣きそうになった。
遊園地で遊んだ後、併設のモールのセールを覗いて、子どもにEXPLORE THE UNSEENと書かれた宇宙柄の服を買って帰った。
「まだ見ぬものを探検せよ」
夜眠る前に
「今日、ドラゴン乗る前に係のお姉さんとお話ししていたでしょう?何を話していたの?」と訊くと、
「(お姉さんが)ピンクでもいい?って言って(自分が)うんって言って、ピンク(のドラゴン)に乗った」と教えてくれた。
彼は確かにピンクのドラゴンに乗っていた。最後の1つに乗ったので、5色あるドラゴンのうちピンクしか空いていなかったのだ。
この調子で母の知らない世界のことをこれからも教えてね。