或るワーキングマザーの日記

意識高い素敵なワーキングマザーには全然なれない。素敵な奥様なんてからきし無理。でもなんとかボチボチやってます。

子育てのマニ車

チベット仏教マニ車

チベット仏教にはマニ車と言うものがあるらしい。回転する円筒形のパーツにお経が刻まれていたり、お経が内蔵されていて、それを一回転させると、お経を一度読んだのと同じだけの徳が積めるという。

チベットの寺院には色とりどりのお経が印刷された旗がはためき、マニ車が並んでいるのだそうだ。色とりどりの旗はタルチョといい、これも風になびく度一度読経した事になるらしい。チベット仏教はなにかと便利だ。

そんな事を、昔子供が生まれる前にとある小説で読んだ。 読んだ当時でさえ、チベットは遠い場所だった。息子が生まれて、なおさら遠く感じるようになった。そしてコロナの今、チベットはさらにさらに遠くなった。

 

 

 

最近の息子のブーム

息子が少し前からなぞなぞだとかクイズにハマった。そしてクイズを母にも出してくるようになって、一つ困ったことがあった。

何問かクイズを出したと思ったら

「次はママが問題だす番!」って言い出すのだ。

 

そんなこと言われても、すぐには思いつかない…

 

息子のクイズは「あがつく甘い食べ物なーんだ」(答え: アイスクリーム)みたいな簡単なのがほとんどで、それも大抵「あがつく甘いアイスクリーム…じゃなかった、食べ物なーんだ?」みたいな可愛いことこの上なくなってるものばかり。だから、私も気負わず簡単なクイズを出してあげれば良かったのかもしれない。

 

だけど、その時の私はその適当なクイズさえ考えるのが面倒で、全てのクイズの答えを目の前にあるモノで統一する事にした。

 

息子である。

 

「ママが世界で1番大好きな子供はだあれ?」とか、「ママの宝物の年中さんはだあれ?」とかとにかく答えが息子になる問題ばかり出した。あまりに簡単な問題に文句が出るかな?と思ったけど、なんだかんだで嬉しいらしく、案外喜んだので、それからずっとその路線で行くことにした。

そしてそのうち母が「クイズ出すよ〜。問題、」と言うだけで、「ハイッ、俺!」って答えるようになった。

 

「問題です。」「ハイッ、俺!」「正解!問題です。」「ハイッ、俺!」「正解!問題です。」「ハイッ、俺!」「正解!問題です。」「ハイッ、俺!」「正解!」「ハイッ、俺!」「正解!」「ハイッ、俺!」「正解!」「ハイッ、俺!」「正解!」「ハイッ、俺!」「正解!」…

 

いろいろ省略されすぎている。

 

でも息子が「俺!」と言い、母が「正解」と言うたび、息子の中で小さなマニ車が回っているのを感じる。自分が母に愛されている存在であると言うマニ車が。いつか息子が大きくなって、全て忘れてしまっても、彼の中に残り続ける何かになるように祈りを込めて、母は今日もクイズを出してマニ車を廻す。

 

 

今は世界を見にいけなくとも、息子が日々新しい景色を日常に持ってきてくれている。息子がいて本当に良かった。チベットに行ってマニ車を廻せなくとも、息子の心のマニ車は廻せるから。コロナで退屈しないで済んでいる。

 

 

いつかコロナがおさまったら、息子とチベットに、高山特有の青い空にはためく色とりどりの旗と、本物のマニ車を見に行きたい。私が昔読んだ小説は、そういえば少年がその両親と共にチベットで大冒険する話だったから。